HP開設10周年記念作品のあとがきに代えて

HP開設10周年記念作品の公開から2週間近くが経ちましたので、
この辺であとがきというか、ちょっとしたまとめ記事を書いてみたいと思います。

元々、記念作品を書こうという構想自体は、昨年の秋口ぐらいからずっと考えていました。
せっかく10年という節目を迎えるのだから、ここいらで久しぶりに新作を書いてみようかなと。

ただ、その段階では具体的にどういう作品にしようかというものは全く浮上していませんでした。
漠然と、新作を書きたいという気持ちだけが先行するばかりで、
アイディアが全く固まらないまま月日が過ぎていったのです。
そのうち、書きかけでストップしている2次創作のやつを適当に一つ書き直して、
それをUPして10周年記念作品として銘打てば、一応体裁は取れるかなとまで思ってしまいました。

それが、今のような形に変わったのは、ツイッターでのあるフォロワーさんとのやり取りがきっかけです。
その中で「あっ、このキャラすごい気に入った。これをモデルにしてなにかお話が書きたい」
という思いが沸き立つと同時に、いわゆる書きたいシーンが次々と頭の中で動き始めたのです。
そこで、どうせなら今書いている『ホーリーエムブレム』の外伝という形式でやれないかと考え、そこからプロットの構築作業が始まりました。

まず、当初浮上した書きたいシーンを何回も何回もアニメーションさせて第1プロットとして成立するまで繰り返します。
続いて、それらのシーンを繋ぎ合わせるためのイベントを考え、これを第2プロットとします。
そして、それらを最終的に物語として成立させるために1本の大きな「鎖」とします。
ここでも、イベントの順番や整合性の調整を行い、物語として不自然な流れにならないように注意します。
十分に繋がりが成立したところで、これを最終プロットとしていよいよ執筆が開始します。

ただ、実際のところはプロット作業には実質3日しかかかっていません。
書きたいシーンが一定数以上に膨れ上がった時点、正確には特にこのシーンを書きたいんだ、
というのが思い浮かんだ時点で、このお話は書く作業に突入することがすでに決定していたのです。
プロットを立てるのは、確かに物語の流れを最初に整理するという意味では必要なものですが、実際には執筆意欲を奮い立たせるという意味合いの方が強かったのです。

今回は、外伝という形式で書き進めていったわけですが、その時に特に意識した点は以下に挙げる通りになるかと思います。

【アニメの劇場版を思わせるようなストーリー展開】

アニメの劇場版と一口に言いましても、実際にはいろいろなスタイルがありますね。
例えば「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」などのように、原作とは全く異なった世界観や舞台設定にキャラクターを送り込んで物語を展開させるもの。
あるいは「ワンピース」「BLEACH」などのように、基礎となる世界観は原作を一通り踏襲しながら、原作とは独立したオリジナルのストーリーを作り上げるもの。
今回はどちらかといえば後者の作り方に近いといえると思います。

ただ、実際に参考したのは「劇場版ドラゴンボールZ」なのですけどね。
あれは外伝といいますか、パラレルストーリーとして非常に上手な作り方をしているなと思います。
原作を知らなくても楽しめるけど、原作のこの設定を知っていると、ああ、なるほどと思わずニヤリとさせられる。
劇場版なのでストーリーとしては比較的シンプルなものではありますが、それでも原作やテレビ版にはなかった世界観の広がりが、劇場版によって展開されたよいお手本だと考えています。

何故、劇場版を意識した形になったかといえば、本作で想定している時間軸が、本編の第2章終了後から第3章の開始前だからです。
第2章の終了から第3章が開始されるまでには、すでに相当の時間が経過し、ルークたちもさらにいくつかの任務をこなしていたという隠し設定があります。
その、顕現されていない時間軸の中で起こった事件という位置付けに本作を置いている、というわけです。

ただ、すでに本編は第3章はおろか、第4章の佳境に突入していたため、本作のストーリーを本編に組み込むことはやや難しい部分がありました。
そこで、外伝+記念作品という2つの看板を掲げさせ、一種のパラレルワールドとして構築するという方策に出たわけです。
逆に言えば、そうすることで本編とはある程度切り離して物語を作ることできるので、自由度の高さという点においても有利に働きました。
本編では思うように組み込むことができない、いわゆる遊び心的なところも相当数詰め込むことができたので、書いていて非常に面白かったです。

また、今回は記念作品ということで、普段はなかなかできないことを特別企画としてやってみたいという思いもありました。
その1つが、本作のゲストヒロインである「ミーナ」のイメージボイス収録です。
これは、ネット上でボイス活動を続けておられます、白鷺風羽(しらさぎ ふう)さんにご協力を頂きました。
劇中で実際にミーナが喋っているセリフの中からいくつかをシチュエーションと併せて抜粋したのが、紹介している3点になります。
返ってきたボイスを聴いた瞬間、思わず背筋が震えたのを、今でも覚えています。なにしろ、まさに自分がイメージしていた通りのミーナの声だったからです。
特に「その3」がものすごい雰囲気が出ていて、ああ、間違いなくミーナだと、非常に感動しました。
あれ以来、ミーナのセリフを読み上げるたびにことごとくあの声で脳内再生されていくのが止まらなくなっています。

また、それとは別にミーナと、もう1人のゲストキャラである「ターニャ」のイメージイラストを、一二三屋さんにお願いいたしました。
ターニャの方は、時間の都合で後追いの公開となってしまいましたが、どちらも大変素晴らしいものなので、是非お楽しみ下さいませ。
個人的には、携帯電話(スマートフォン)の待ち受けにしたいぐらいですよ、本当に。
画像のサイズもちょうどいいぐらいなので、一画面に収めてフリックでループしない設定にすれば、はい、世界に一台だけのスマートフォンの出来上がり。(笑)
近く、スマートフォンに乗り換えることを検討しているので、多分真っ先に待ち受け画像の設定をしてしまうかも知れません。(コラ)

特別企画にご協力下さいましたご両名には、この場をお借りして改めて御礼申し上げます。

当HP『徒然なる世界』も、今年の9月末をもって、満10周年になります。
それを、こんな形で迎えることができたのは、自分にとっても望外の喜びですし、非常に思い出深い企画となりました。
これからも、さらに皆様を楽しませることのできる作品を目指して頑張ってまいりますので、今後とも、どうぞ応援よろしくお願いいたします。

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この世には「魔王」も「伝説の勇者」もいない

※今回の記事は、以前(FC2ブログ時代)に掲載したものの再掲(一部改変あり)になります。

今さら、こんなことを言うのもなんだかな、という気がしたのですが、
どうにも引っかかっているところがあったので、改めて言わせていただきます。

以前のブログ(といっても1年近く前の記事ですが)で、
東北電力の株主たちが同社に対し原発の廃止を提案したというニュース記事をお届けました。

その記事で率直に気になったことが一つあります。
それは、女川原発(東北電力の管轄です)が福島第一原発の二の舞にならなかったことを「偶然に過ぎない」の一言で片付けているということ。
福島第一の重大事故について仔細に検討する必要性を認めるならば、女川があのような事態に至らなかった理由についても検討する余地があったはずです。

福島第一と女川ではなにが同じでなにが違っていたのか。
その差異が、事故の規模の差にどの程度影響を及ぼしたのか。

その情報を収集し、比較検証した上での提案ならばまだよかったのですが、単に「偶然だ」と言って片付けてしまうのは非常に危険です。
それは、核を含めたエネルギーの安全利用に対する議論の可能性を狭めてしまうことにもなりかねないからです。

もう一つ、この手の議論で注意しなければならないことがあります
それは、なにかを絶対的な「悪」に仕立て上げ、それさえ無くなれば全て解決、みんなハッピーという単純な二元論に陥りやすいということ。

あの福島第一の事故を受けて、原発の是非に関する論争が盛んになること自体は、決して悪いことではありません。
ですが、果たして原発を廃止して、それで全てが終わるのか。
原発が無くなったからといって、この国が地震の恐怖から逃れられるわけではありません。
仮に、今回重大事故が発生したのが原発ではなく火力発電所だったとしたら。
膨大な量の高燃焼性燃料を扱う施設だけに、大火事や大爆発という、放射能汚染とは別のリスクが発生する危険性があります。
そうなった時に、では火力発電は危険だから止めろというのか。
あるいは、火力よりも効率が高く、安全性にも優れた最新式の原発にしておけば、あんな爆発事故は起こらなかったのにと。
結局、これもまた東京電力を非難する材料にしかなりません。

世の中というのは、なにが善でなにが悪かという、単純な二項対立で動いているものではありません。
そのことは、RPG(ロール・プレイング・ゲーム)における「魔王」の存在と対比させてみるとよく分かります。
特に、ドラゴンクエスト(以下ドラクエ)の比較的初期のシリーズをモデルにすると話が進みやすいです。

ドラクエにおいて、何故王様や人々が主人公である勇者に魔王討伐を依頼するのか。
それは以下の理由があるからです。

1.魔王の存在が、人々の心に恐怖を与え、精神的な安定感を乱している
2.魔王および魔王が率いる魔物の軍勢が、実際に人々や街を襲うことで物理的な実害を生じさせている
3.以上に付随する形で、人々の行動に制約が課せられ、経済活動や世界の発展に大きな障害となっている

すなわち、人々は魔王を自分たちだけではなく、世界にとっての「敵」であると認識し、魔王側もそう認識されるような行動を取っているわけです。
ロール・プレイングには、元々「役割を演じる」という意味合いがあります。
世界の発展を阻害する役割を与えられた魔王と、その魔王を倒す役割を与えられた勇者。
そうした、二項の対立的構図によって生み出されているのがゲームとしてのRPGであるといえます。

翻って、では原発は討伐されるべき「魔王」なのか。そして、原発廃止論は歓迎されるべき「勇者」なのか。

確かに放射能汚染というリスクを抱えているという点においては、人心の安寧を乱しているかも知れません。
ですが、原発が生み出す莫大かつ安定した電力供給によって、我々の生活が飛躍的に便利になったことも紛れもない事実です。
さらに、それによって経済活動の活発化を後押しし、結果として世界屈指の経済大国になったという歴史を、一体誰が否定できるというのでしょうか。
このようにして考えてみると、「原発=魔王」「原発廃止論=勇者」という、単純な図式は必ずしも真ではないことが結論として導かれることになります。

原発廃止論者の全員とは言いませんが、多くに欠落しているのは、こういった想像力に対するアプローチではないかと、自分は1年近く前からずっと考えています。
彼らは得てして原発を廃止することに関するビジョンについて具体的な事例を示唆しようとしません。
RPGならば、魔王を倒してハッピーエンドになりますから、それでもいいでしょう。
それは、魔王の恐怖に怯えるという「役割」を与えられていた世界の存在理由が、魔王がいなくなった時点で消滅したことを意味するものでもあるからです。
しかし、現実の社会はそうではありません。
例え原発が無くなろうと存続しようと、この世界の存在理由が消えてなくなることはないのです。

この世界は常に複雑な因果関係によって動いています。
例えば長引くデフレによって正規社員の縮小が起きる一方、派遣社員や契約社員、日雇い労働者といった人材派遣ビジネスが活況を呈する。
ある事物の変化が、めぐり巡って別の事物に影響を与える。そうして影響し、また影響されることによって経済は動き、人々の生活は成り立っているのです。
原発にしてもそれは同じです。続けることによる影響は今までどおりであるとして、では廃止した時に生じる影響はどれほどのものになるでしょうか。

不足する電力をどのようにまかなうのか。火力の比率を高めれば化石燃料の枯渇を促進する。
かといって太陽光や風力などの自然エネルギーでは安定性に欠ける。
関連事業で職を得ていた人たちは、原発が無くなれば間違いなく失業するでしょう。そうした人たちの生活対策はどうするのか。
「自業自得」だと切り捨てるのは簡単。ですが、そうして原発関連に近しい人物を陥れていくのは、さも原発廃止論を支持した自分たちこそ正しいという、一種の選民思想につながり得るものであり、これもまた別の意味で危険であると言わなければなりません。

存在し続ける世界に対して、我々はそれをどのような方向に導いていくのか。
原発の是非を含めた、これからの時代にふさわしいエネルギー利用のあり方をいかにすべきなのか。
そうした議論の具体性を伴わない原発廃止論は、ただの絵に描いた餅の域を出ることはありません。
一時(いっとき)の安寧と引き換えに、どれだけのものを失うことになるのか。それが、もし取り返しの付かない、それこそ日本の存続すら危うくするものになるとしたら。
そんなバッドエンド、誰も望んではいないでしょう?
でしたら、もう少し想像力を膨らませながら議論を深めていってもいいのではないでしょうか。

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なにかを「表現する」ということ

昨日のライブも、日曜日のそれと同様、非常にバラエティーに富んだ内容で面白かったです。

これもレポートは敢えて書きませんが、またまた思ったことを書いてみたいと思います。

自分は、両方のライブにおいて、最前列のステージ正面という、メチャクチャ特等席を確保することができました。
自分がこんないい席を取ってしまってよいものかと申し訳なく思ったりもしましたが、せっかくの機会なので最後まで観ていくことにしました。

その中で、やっぱりステージとかなり近い席だからなのでしょうね。
なんというか、出演者の方々の呼吸が感じられるような気がしました。
中には、演奏中に首筋や額などにものすごい量の汗をかいているのがはっきりと見えて、ああ、歌ったり演奏するのって、やっぱり相当に体力を使うのだなと、改めて実感しました。

でも、逆に言えば、汗をかくほどに本気でこのステージに立っているのだなということもヒシヒシと感じました。
であるからこそ、自分もこれは真剣な態度で観なければ失礼になる。終わった後に挨拶をすることはできなくても、途中で退席することは明らかに無礼に相当すると思いました。

音楽に限らず、なにかを「表現する」ということは、実は大変はパワーを必要とするものなのです。
見ている側は一見して平然とやっているなと思っていても、実際に作っている方はその影で人には明かさないほどの苦労と努力を重ねているのです。

それは、恐らく、少しでもいいものを作りたい、よい表現を生み出したいという思いの成せる業。
真剣だからこそ出せるパワーというものは確かに存在するのです。
そして、そのパワーはそれを受けた人の心に確かな「なにか」を残すのです。

それは時に「感動」であったり。
また時に「創作意欲」になったり。

人によって形は異なるでしょう。
だからこそ、人はなにかを表現するのを止めたりしないのだと思います。

何故なら、表現することを止めてしまったら、人はただ生きるだけの存在になってしまうから。
表現することによって人は生き、また生かされているのだと、自分は考えます。

そして、自分も物書きとして生き、そして生かされていることに感謝したいと思います。

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いいものを作るために大切なこと

昨日のライブはメッチャ密度の高い内容で、とても楽しかったです。

詳しいレポートは敢えて書きませんが、それとは別にちょっと思ったことを書いてみます。

いいものを作るためには、「作りたい」という意思や決意を強く持つことがまず第一に必要です。
その気持ちがなければ、まず作ろうという行動を起こすこともありませんし、仮に起こしたとしても、石が伴わなければ長続きもしないでしょう。

ですが、多分それだけでは足りないのです。
自分の引き出しから意思を搾り出すだけでは、いつか枯れてなくなってしまうでしょう。

自分は技術屋なので、その方面の用語的な説明をすると、
アウトプットを得るためには、なんらかのインプットが必要であり、
インプットがあるからこそ、アウトプットはその時の条件に応じて変化していくのです。

翻って、創作という観点で見た場合、いいものを作るという「アウトプット」を得るためには、
いい物に触れたり観たり聴いたりするという「インプット」が必要なのです。
他の方々の作品に接することでその良さを見出す、それ自体が創作意欲というアウトプットとなったり、
また自分の作品に対するアイディアにフィードバックする材料となって昇華していくのです。

「物書きさんはもっと小説を読むべき」
「絵描きさんはもっと絵を観るべき」
「音屋さんはもっと音楽を聴くべき」

という意見もたまに耳にしますが、自分はこうした分野にとらわれた考え方は、あまり好きではありません。

自分は確かに物書きですから、もっとたくさん小説を読んだ方がいいことは理解しています。
ですが、自分はイラストや音楽鑑賞も好きですし、そこから得られる作品のイメージは、実は少なからず自分の作品のアイディアに影響を与えているのです。
それは、自分が意識するとしないとに関わらず、実際に接触したものであるからこそ、自分の深層心理において確かな説得力を持って印象付けられているものなのです。

自分一人だけでは決して浮かばなかったであろうイメージが、他の方の作品によって補完され、確かな造形となって生まれ出す。
実際に、自分自身のこれまでの創作遍歴を振り返れば、自分自身の力だけで生み出したアイディアというのはほんの一握りしかありません。
大抵は、他の作品からの影響であったり、また他の作品を自分なりに噛み砕き、またオマージュ的な意味合いを持って盛り込むということの繰り返しなのです。

それが可能なのは、ひとえに無数のインプットをそれこそ貪欲に吸収してきたから。
だからこそ、そうした蓄積がアウトプットの源泉となり、それが作品という形となって現出する。

きっと、先達もそのようにして少しでもいいものを作り出そうと苦心してきたに違いありません。
無数のアイディアから、さらに無数のアイディアが生まれる。
創作とは、まさにアイディアという名の星が散りばめられた無限の宇宙である。
そんな風に思えて仕方がありません。

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日本は必ず強くなる

3月11日。

今日で、あの東日本大震災から丸1年が過ぎました。
あの日から、日本は大きく動きました。

変わることを余儀なくされたもの。
変わることを自ら選んだもの。
それでも敢えて変わらなかったもの。

それぞれに様々な事象を巡らせながら、この1年はあっという間に過ぎていったような気がします。

自分も、あの日のことは今でもよく覚えています。

あの時、自分は前の現場で仕事をしていました。
ちょうど15時近くだったこともあり、ちょっとお茶でも飲みに行こうかなと思っていたところに、あの地震が発生。
幸いにしてこちらは荷物が落下するなどの被害はありませんでしたが、その後発生した停電によって全く仕事ができない状態に。
仕方なく、その日は上長判断により、帰宅組と待機組に分かれてその後の動向を見守ることにしました。
(ちなみに自分は帰宅組でした)

途中、1駅分歩いたところで休憩。
当然電車も全てストップし、全く走る気配はありません。
周囲を見渡せば、携帯電話で連絡を取り合う人や、公衆電話に押しかける長蛇の列。
自分も携帯電話で何度も家族に連絡をとろうとしましたが、全くつながらず、安否の確認もままなりませんでした。

そこで、ふと思いました。
この駅構内なら万が一雨が降ってきてもしのげるし、最悪翌日の始発には電力も復旧して走れるようになっているだろうと。
まさか、駅構内で野宿をすることになるとは思いませんでしたが、それも仕方がないと思い、覚悟を決めていました。

ところが、それから1時間後、近所で喫茶店を営んでいるオーナーの方が現れました。

「皆さん、少ないですが炊き出しを用意いたしました。よろしければどうぞ食べていって下さい」

自分はそこで考えました。
まずは腹ごしらえをしよう。ちょうどお腹もすき始めていた頃だし。
そこで、その後どうするかを思案すればいいと。

オーナーさんの案内に従い、その喫茶店に赴くと、テーブルにはそれぞれ1本のロウソクが。
明かりも使えないので、店内はこのロウソクによる橙色の光で彩られていました。
そこで出されたのは、1杯のレトルトカレー。
なんの変哲もない、普通のカレーだったのですが、その香りが鼻を通り抜けた瞬間、自分の中で言いようもない感情が襲いました。
ごくありきたりの味だったにも関わらず、こんなにもカレーが美味しいと感じたことは今までありませんでした。
そして、そのたった1杯のカレーが、自分の考えを変えました。

「よし、帰ろう」

ご飯の一粒も残さず完食し、オーナーさんにお礼を言った後、自分はその足で再び家に向かって歩き始めました。
街路灯もことごとく消えており、携帯電話の液晶画面のわずかな明かりを頼りに進みます。
普段では考えられない暗い道をたった一人で歩くのは、今振り返ってもとても怖かったです。
なにか喋っていないと、不安に心が押しつぶされてしまいそうで、とにかく意味のないことでもいいから喋りながら帰ろうと思いました。

そうしているうちに、徐々に街路灯も復旧。
コンビニも営業を再開し始め、そこで改めて食料調達。
途中でようやく家族から連絡があり、全員無事であることを確認。
こちらも帰宅中であることを伝え、最大の不安はこれで払拭されました。

そして、さらに4駅分歩いたところでバスも運行再開。
ここからなら家の近くのバス停まで走っている路線があることを知っていた自分は迷うことなくそのバスに乗り、結局日付が変わる30分前に家に着きました。

それから数日後、あの喫茶店にお礼を兼ねてお客として向かったのは言うまでもありません。
オーナーさんは自分のことなど覚えていないでしょう。
ですが、自分はちゃんと覚えています。
あの日のことを脳裏に思い返しながら、ゆっくり食べたトーストとコーヒーの味は、今でも忘れていません。

復興に向けた戦いは、これからが本番だといえます。
まだまだ多くの課題が残されていますが、この国にはきっとそれらを乗り越える底力があると、自分は確信しています。
第二次世界大戦で焼け野原にされた中から四半世紀でオリンピックや万博を開催できるまでの復活劇を演じてみせた、その歴史は世界がなにより知っています。

だから、自分は一切疑っていないのです。

この国はもっと強くなる。
この国には無限のポテンシャルがある。
そして、それを成し遂げるのは、我々国民一人ひとりの力なのです。

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プロフィール

ryudo0123

Author:ryudo0123
ここは『徒然なる世界』の管理人である私リュードの執務室となっております。
日常の雑感やいろいろ考えることなどを不定期に記して参ります。

『徒然なる世界』
http://www.h4.dion.ne.jp/~ryudo/

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